遺産を相続できる人は、原則として、民法に規定されている法定相続人に限られるため、それ以外の人については相続することはできません。

ただし、相続人が誰もいない場合に、故人と特別な間柄にあった人については、特別縁故者として一定の遺産を取得できる可能性があります。

ここでは、特別縁故者となれる人の具体例や、手続きの流れなどについて解説します。

相続人が誰もいない場合は特別縁故者が相続することができる

遺産相続において相続人が誰もいない場合、相続財産は国のものになりますが、相続人ではないものの、生前に故人と特別な関係にあった人がいる場合については、特別縁故者として、一定の遺産を受け取ることが認められる可能性があります。

特別縁故者となれる人物とは?

特別縁故者となれる人については、法律によって次の3パターンが規定されています。

亡くなった方と生計を共にしていた人

相続人ではないものの、亡くなられた方と共に生活をしていた人がいる場合については、相続による生活への影響が大きいと考えられるため、特別縁故者として認められる可能性があります。

具体的には、結婚していない内縁関係の夫婦で、一緒に生活していた期間が長いような場合です。

亡くなった方の療養看護に務めた人

療養看護を尽くしてきた人については、特別縁故者として一定の遺産を取得することが認められる可能性があります。

ただし、看護士、介護士、家政婦など、業務として報酬を得て療養看護していたような場合については、特別縁故者として認められません。

その他の特別な事情がある人

亡くなられた方と生前に遺産を譲るような特別な約束をしていたような人や、親子同然に生活してきたような人については、特別縁故者として認められる可能性があります。

また、亡くなられた方が経営していた法人が特別縁故者として認められる場合もあります。

特別縁故者の申し立ての流れ

特別縁故者となるためには、事前に幾つかの段階を経て、最終的に認められるかどうか決定することになります。

具体的な流れは、以下の通りです。

申し立て〜調査など

家庭裁判所に相続財産管理人の選任の申し立てをして、相続財産管理人が選任されると、通常の遺産分割の時のように、相続財産の調査や相続人の調査を行い、本当に相続人がいないかなどについて確認します。

また、借金などのマイナスの財産がある場合については、弁済の手続きも行います。

公告

公告が出され、一定の期間に相続人が現れなかった場合に、相続人不存在が確定し、特別縁故者がいる場合に遺産が分けられる可能性が出てきます。

特別縁故者の申請

相続人の不存在が確定してから3ヶ月以内に、自らが特別縁故者であると家庭裁判所に申請することで、一定の遺産が分与される可能性があります。

特別縁故者として認められるのか、認められたとしてどの程度の財産を分与されるのかについては、家庭裁判所の裁量によって決まります。

連絡がつかない相続人がいる場合は不在者財産管理人を選任する

特別縁故者が認められるのは、あくまで相続人が全くいない場合です。

生存しているものの一切の連絡がつかない相続人がいる場合は、不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てることで、連絡がつかない人に代わって、不在者財産管理人が遺産分割協議に参加します。

また、生存しているかどうかわからない状態が7年間続いている場合については、「失踪宣告」の手続きをすることで死亡したとみなすことが可能です。

遺言書を重点的に捜索することが重要

特別縁故者の制度については、内縁関係の夫婦や、長年姑の療養看護に尽くしてきた嫁など(但し、法改正により、今後、相続人の妻などは請求ができる可能性があります)にとっては非常に重要な制度ですが、特別縁故者として認めてもらうためには、1年程度にもわたる手続きを経た上で、家庭裁判所に判断してもらわなければならず、非常に大変です。

ただし、相続人以外の人が遺産を取得できるケースは、特別縁故者だけに限りません。

相続人が誰もいないようなケースについては、故人が生前に遺言書を書いていて、任意の人に財産を遺贈する旨の記載がされていることがあります。

遺言書で遺贈されていれば、特別縁故者の手続きをすることなく、遺言書を執行するだけで遺産を取得することが可能です。

そのため、遺産相続が発生して相続人がいない場合は、まず遺言書が保管されていないか徹底的に探しましょう。

特別縁故者は相続税は高い

特別縁故者に該当する可能性がある方については、事前に相続税についても確認しておく必要があります。

特別縁故者が遺産を取得すると、相続人が相続する場合に比べ、相続税が2割加算されます(但し、兄弟が相続人になる場合は除く)。

また、相続税の基礎控除については、通常3,000万円+600万円×法定相続人の人数の基礎控除額が適用されますが、特別縁故者については、法定相続人がいないため、3,000万円までしか特別控除額が適用されないことに注意しましょう。

特別縁故者の申し立ては当事務所にご相談ください

特別縁故者の申し立てについてはご自身で行うことが難しく、専門性が必要になる分野です。

当事務所にご依頼頂ければ、裁判所に対して証拠を揃えて納得してもらいやすい書類を作成するなどして、できる限り特別縁故者として認めてもらえるよう全力を尽くします。

また、当事務所では税理士や司法書士との連携があり、遺産を取得する際の相続税申告や登記申請についてもワンストップサービスによるサポートが可能です。

特別縁故者の手続きには期限がありますので、できる限りお早めにご相談ください。

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