相続を進めるには「法定相続分」と「指定相続分」の意味を理解していなければなりません。

今回は、遺産相続における法定相続分と指定相続分を解説します。

法定相続分とは

相続が発生して、相続人が1人であれば遺産分割の必要はありませんが、相続人が複数いる場合についてはそれぞれの取り分について話し合って決めなければなりません

しかし、目安もなくゼロベースで話し合いをすると、それぞれが権利主張をし合い、話し合いがまとまらなくなることが予想されます。

そこで民法では「法定相続分」という遺産分割における取り分の目安が定められています。

法定相続分は強制ではありませんが、これを基準に遺産分割するケースが一般的です。

ケースにおける法定相続分

法定相続分は主に以下のように定められています。

  • 配偶者と子供が相続人の場合:配偶者1/2 子供1/2
  • 配偶者と親(直系尊属)の場合:配偶者2/3 親1/3
  • 配偶者と兄弟姉妹の場合:配偶者3/4 兄弟姉妹1/4

子供、親、兄弟姉妹が複数名いる場合は、それぞれの法定相続分を人数で均等割り

非嫡出子の法定相続分について

結婚していない男女間に生まれた子のことを、相続では「非嫡出子」といいます。

非嫡出子については、嫡出子(結婚している男女間に生まれた子)の1/2の法定相続分しか認められていませんでした。

しかし、平成25年9月の最高裁判決によって当該民法の規定が憲法に違反しているとの判断がなされ、現在では嫡出子と非嫡出子の法定相続分は同じとなっています。

特別受益と寄与分について

法定相続分は目安のひとつとなりますが、各家庭の個別の事情については一切考慮されていません。

ある相続人が多額の生前贈与を受けていたり、被相続人の財産増加に関わったような特別な寄与をしていた場合は、以下の制度を用いて相続分を調整することになります。

特別受益

一部の相続人が遺言書や生前贈与などによって、特別な利益を受けている場合については、その分も相続財産に持ち戻して遺産分割をするという制度です。

生前贈与の場合は、遡る期限が定められていないため、何年前の贈与でも、特別の利益と言えるレベルの贈与であれば、持ち戻しの対象となります。

持ち戻しがされるということは、その分特別受益を受けている相続人の相続における取り分は少なくなるので、相続人の間でトラブルになることがよくあるのです。

どこからが特別受益に該当するのかについては、一概には言えず、それぞれの事情を総合的に考慮して判断することになるため、できる限り弁護士を立てて話し合うことをおすすめします。

寄与分

亡くなられた方の生前に特別な貢献があった相続人については、法定相続分よりも上乗せした取り分を主張できるという制度です。

特別な貢献にあたるかどうかの判断についても、一概に決められないため、個別に話し合って合意する必要があります。

指定相続分とは

相続では法定相続分ではなく、遺言書によって独自の取り分である「指定相続分」を規定することもできます。

相続発生時に遺言書が発見されれば、原則として指定相続分の内容が優先して適用されます。

ただし、遺言執行者がいない場合において、相続人全員が合意すれば、遺言書の内容と違う取り分で遺産分割をすることも可能です。

遺言書を確実に執行する方法

遺言書を書いても相続人全員に否定されたら意味がないと感じるかもしれませんが、「遺言執行者」を指定することで、確実に遺言書の内容通りの遺産分割をすることも可能です。

遺言執行者とは、遺言書の内容通りに遺産分割の手続きを行う責任者のことで、遺言書の中で指定することができます。

遺言執行者が指定されている場合については、遺言執行者の同意がなければ、遺言書と違う分け方はできません。

当事務所では、遺言書作成のサポートと合わせて、遺言執行者についても承っています。

万が一の時もご本人様の意思を引き継いで、遺言書の内容通りに手続きすることが可能です

遺言書によって法定相続分を指定相続分に変える場合は、相続人同士で感情的な対立が生じる可能性があるので、実際に遺言書を執行したらどうなるのかということを知っておくためにも、当事務所にご相談の上、必要な対策をとっておくことをおすすめします。

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