法律では「遺留分」という権利が認められています。

遺言書などで遺留分を侵害する指定分割をされた場合は、これまでは遺留分減殺請求によって侵害された遺産を、法改正後は遺留分侵害額請求によって侵害相当額を金銭債権として取り戻すことができます

遺留分減殺請求はご自身でできないこともありませんが、弁護士への依頼のもと適切に手続きを進めた方がより確実な権利確保が期待できます(どこまで侵害されているかなど法的な論点が多々あるためです)。

今回は、遺留分減殺請求の基本知識や弁護士に依頼するメリット、請求する際の3つのポイントについて解説します。

兄弟姉妹以外の相続人には遺留分という権利が認められている

法定相続人(兄弟姉妹を除く)には「遺留分」という権利が認められています。

一切の財産が相続できなければ生活が立ち行かなくなる恐れもあるため、相続人保護の観点から、遺留分で最低限の相続分が保証されています。

そもそも相続という仕組みは、残された家族である相続人が故人の遺産を引き継ぐことで、生活を保護するという意味も持ちます。

ところが、相続には遺言という制度もあり、遺産分割をするにあたり、その財産を築き上げてきた本人の意見が死後の相続において最大限尊重されるため、遺言書の内容によっては、一部の相続人の相続分が極端に少なくなってしまう可能性もあります

これに対応するため、民法では法定相続分のうち一定の割合を「遺留分」とし、遺言書で遺留分を侵害されたとしても、相続人が返還請求できる仕組みとなっています。

遺留分は当然に守られているわけではなく、侵害された段階で早期に手続きを取らなければなりません。

認められている遺留分は相続順位によって変わる

遺留分は原則として、相続財産の1/2を全体の遺留分として、相続人の間で分けることになります。

(直系尊属のみが相続人の場合は1/3が遺留分となります)
詳しくは以下のとおりです。

  • 配偶者のみ1/2
  • 子のみ1/2
  • 直系尊属のみ1/3
  • 配偶者1/4:子1/4
  • 配偶者2/6:直系尊属1/6

子や直系尊属については、複数名いる場合は、その人数で均等割り

遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)のやり方

遺留分減殺請求に決められたやり方はないので、法的には口頭で請求しても問題ありません。

ただ、口頭だと全く証拠が残らないので、通常は内容証明郵便など請求した期日がわかる方法で請求するのが一般的です。

遺留分減殺請求の3つのポイント

遺留分を請求すること自体はそこまで難しくはありませんが、そこに至るまでの準備が大変なことやトラブル性が高いことから、基本的には弁護士を通して行うことが一般的です。

また、以下の3つのポイントに留意しながら行わなければなりません。

ポイント1:意外に短い時効

遺留分減殺請求は権利の時効消滅に注意しなければなりません。

時効期間は以下の通りです。

  • 遺留分の侵害があったことを知ったときから1年
  • 相続開始から10年

意外に短いことがわかるはずです。

遺留分の侵害があったことがわかった時点で速やかに着手、または弁護士に相談することが重要と言えます。

ポイント2:相続財産の評価

遺留分減殺請求のキモとなるのが金額の算定です。

遺留分を先ほどの割合に当てはめて計算するだけであれば簡単ですが、相続財産の中には現預金だけではなく、不動産や株式等、別途評価額を計算する必要がある財産が多々あるため、侵害されている金額を正確に算定するのは専門知識を要します

そもそも計算が間違っていたら損をする可能性があるということは十分に理解しておかなければなりません。

当事務所では税理士や不動産会社、不動産鑑定士などと連携を組み、正確な査定を行う体制を整えております。遺産の範囲に不安がある方でも安心してご相談ください。

ポイント3:遺産の範囲の把握

遺留分を考える時にときおり出てくるのが「特別受益」の問題です。

生前に特別な贈与を受けている相続人がいる場合については、その分も相続財産に持ち戻して計算をする必要があるため、特別受益を認めるかどうかによって、遺留分の金額も変わってくることになります。

遺留分減殺請求をするにあたっては、相続財産の評価や範囲の把握が正確でなければなりませんが、かといって時効があるため時間的な制約もあるため、決して簡単な手続きではないことはお分かりいただけたかと思います。

遺留分減殺請求は、法改正で遺留分侵害額請求に

遺留分減殺請求によって侵害された遺留分を取り戻す場合、原則として侵害された現物の返還を求めることしかできませんでした。

不動産であれば侵害している部分のみの返還しか求めることができず、侵害額に相当する金銭請求を行えなかったため、相手方が任意に応じてくれなければ非常に難しい立場に立たされていたのが今までの状態でした。

しかし、この度の法改正により、遺留分の返還については、現物ではなく侵害額に相当する金銭の支払いを請求できることに変わりました

今までは現物でしか請求できなかったのが、一転して金銭でしか請求できなくなります。

遺留分の返還請求が金銭債権化したことで、呼び方についても「遺留分侵害額請求」となり、非常にわかりやすくなりました。

遺留分侵害額請求は当事務所にお任せください

法改正により遺留分侵害額請求に変更になったことで、今後は金銭での返還請求になるため、実務的な部分としては、やはり侵害額の見極めがとても重要です。

先ほども触れたように、相続財産の評価や特別受益の有無などによって、侵害額自体が変わってくるため、相手方との交渉については、できる限り弁護士にご依頼いただくことをおすすめします。

当事務所にご依頼いただければ、初回相談から弁護士2名体制で対応しています。

多角的な分析と緻密なサポートが当事務所の強みです。

遺留分が侵害されてお困りの方がいらっしゃいましたら、今すぐ当事務所までご連絡ください。

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