相続は法定相続分に基づいて分けることが一般的ですが、相続が発生するまでの事情によっては法定相続分通りの分割に納得がいかないという場合も出てきます。
例えば、他の相続人は一切亡くなった親の面倒を見なかった中、長男だけは献身的に尽くしてきたというような場合、長男からすれば同じ法定相続分では納得ができないでしょう。
今回は、遺産分割において交渉のポイントとなる「寄与分」について詳しく解説します。
生前に行った特別な貢献を評価する「寄与分」とは?
寄与分とは簡単にいうと、遺産分割の際に法定相続分にプラスアルファする上乗せ分のことです。
相続人の中に、故人の生前に特別な貢献をした相続人がいる場合については、その貢献度を評価して「法定相続分よりも多い相続分を認めましょう」という制度です。
ただし、寄与分については当然にもらえるものではなく、通常は、寄与分が認められる相続人自らが寄与分を主張しないと獲得することはできません。
現実には寄与分が認められる貢献は限られている
寄与分が認められるためには、ちょっとした貢献では足りず、「特別の寄与」があった場合にのみ認められます。
例えば、妻として献身的に夫を支えた、長男として親の介護に尽くした、といった事情を主張しただけでは、他の相続人に寄与分を認めてもらえません。
そもそもこれらの行為は、家族であれば当然の行為でもあるため、そのレベルよりも一段上の貢献度が求められるのです。
寄与分を主張できる人は法定相続人に限定される
寄与分について主張できるのは、法定相続人に限定されます(但し、法改正後は一定の範囲の親族も寄与分を請求できるようになります)。
そのため、相続人ではない内縁の妻については、いくら内縁の夫に尽くしたとしても、寄与分が認められることはありません。
内縁の妻が内縁の夫の遺産を受け取るためには、亡くなる前に婚姻するか、遺言書を残す必要があります。
寄与分の計算方法
寄与分が認められた場合については、以下の計算式に従って相続分を計算します。
(遺産総額−寄与分)×法定相続分+寄与分=相続分!
例えば、遺産総額1億円で長男と次男が相続する場合において、長男に1,000万円の寄与分が認められた場合、長男の相続分は次のようになります。
(1億円−1,000万円)×1/2+1,000万円=5,500万円
このように、遺産総額から寄与分を引いた上で法定相続分を計算して、その上で寄与分をプラスします。
寄与分が認められる具体的な事情とは?
法定相続分とは別に寄与分を認めてもらうためには、一般的な貢献では足りず、特別な寄与と認められる必要がありますが、具体的にはどのような以下のような事情が寄与分として認められやすい傾向にあります。
- 被相続人の事業に関する労務の提供
- 被相続人の事業に関する財産上の給付
- 被相続人の療養看護
労働力の提供
故人が会社やお店を経営していて、相続人がそこで働いていた場合に可能性があります。
ただし、通常の社員やアルバイトのように給与を支給されていたのであれば、特別の寄与とはいえません。
特別の寄与といえるためには、事業のほとんどを無給で手伝って支えたといった事情が必要です。
金銭等の出資
故人に対して金銭を支出した事情がある相続人については、寄与分が認められる可能性があります。
例えば、お店の改装費用として多額の資金提供をしたような場合については、一般的な扶養義務を超える特別な寄与といえるため、寄与分が認められるでしょう。
看護の貢献
故人の老後の介護をすることは、家族の扶養義務の範囲といわれているため、単に介護をしただけでは寄与分が認められません。
ただし、相続人が仕事を辞めてまで献身的に介護に専念したために、高額な入院費用や介護施設への入所費用の支払いを免れたような場合については、介護でも特別な寄与として寄与分が認められる可能性があります。
財産管理への貢献
相続人が故人に変わって財産を管理したことで管理費用などの支出が免れた場合に、認められる可能性があります。
故人がアパートなどの賃貸経営をしていた場合において、本来であれば管理会社に管理料を支払って管理委託が必要なところ、相続人が代わりにアパートの賃貸管理を献身的に行ったような場合については、寄与分が認められる可能性があります。
寄与分の主張はトラブルの引き金になることもある
寄与分は法定相続分のように一律に割合が決まっているわけではないので、遺産分割協議において相続人全員で話し合って決めることになります。
ただ、寄与分を主張する場合、自分の貢献度をいくらと見積もればいいのかわからず、他の相続人と交渉がしにくいという場合や、相手から寄与分を主張されてどう反論していいかわからない、といったこともよくあります。
寄与分は話し合いで決めなければならないからこそ、遺産分割協議において争い事の火種となる可能性が高いのです。
寄与分の交渉はプロにお任せください
寄与分を認めてもらうためには、相続人自らが主張するよりも、弁護士が代理人となって法的な見解もお示ししつつ相手を説得する方が、争い事を回避できる可能性が高まります。
寄与分の金額についても、弁護士が過去の事例などを参考にして交渉することで、相手も納得しやすくなるでしょう。
寄与分を相手に認めてもらうためには、できる限り寄与したことの証拠が必要です(口座の入出金記録など)。
ただ、証拠がなかったとしても当事務所はそう簡単には諦めません。
証拠がない場合でも、弁護士を通じて理由を詳細に伝えて相手に理解を求めることで、認めてもらえることもあります。
また、相手方に証拠がある場合でも、主張を相手に投げかけることで証拠が出てくることもあるので、まずは諦めずに主張することが重要です。
当事務所は、1案件について弁護士2名体制で対応しますので、より多角的な視点で最良の解決策をご提案することができます。
寄与分の獲得についても、過去に実績がございますので、どうぞ安心してご相談ください。